生徒には常に本音で

授業中に科目の内容とは別に何を話すか、頭を悩ませる講師は多い。当塾も、生徒は部活等で疲れた状態で塾にやって来るので、数分に1回は笑いを混ぜるようにしている。

一般的には、ネットや雑学本で情報を仕入れて、それをドヤ顔で話すのが定跡だ。

しかし、当塾ではいわゆる「やる気鼓舞」や「夢を語る」などと言った話はしない、いや、できない。理由は簡単。私は、そんな偉い人間ではないからだ。高校は中退、大学は「かっこいい」という不純な動機で選び、できる仕事が何もないから塾講師になったような人間には、口が裂けてもそんなことは言えない。

一貫しているのは、生徒には本音で接するということ。話すのは、講師自らの体験談のみである。特に失敗談はウケがいい。彼らにとっては、こういう大人がもの珍しいのだろう。

私の場合、人生で3回ニートを経験しているが、無職時代のダメ人間振りを話すと大抵、教室の温度は一気に温かくなる。33歳で無職だったこと、一日中マンガ喫茶で時間をつぶしていたこと、お金がなくなるとコンビニの駐車場でひたすら寝ていたこと、塾を開校したその日に車のタイヤが走行中に外れたこと…

「頼むからこんな大人にならないでくれよ」といつも言っている。ただし、これには意図がある。

なぜなら自分自身が裸にならないと、相手も裸になってはくれないからである。教務力とこれらが合わさって、確固たる信頼関係を築くことができると確信している。だから、「体験記」に掲載されている内容は、全て生徒の本音の部分なのである。

昨年、ある生徒からこう言われた。「大人は言っていることがコロコロ変わるけれど、ここの塾の先生は絶対にブレない。だからついて行く」

これからも生徒には「本音」で接していこうと思う。綺麗事は絶対に言わない。