夏期講習中の嬉しかったこと③

当塾には◯つけや補習のサポートとして複数名のアルバイトがいる。彼らは全員が前職時代の私の教え子で、水野という講師の人間性も熟知している。

勿論、黒板を使っての授業はさせない。我々プロ講師にとって黒板はいわば「聖域」なので、中途半端な授業力しか持たぬ者にチョークは握らせたくないからだ。

 

彼らが、アルバイトとして当塾に入る時に、一つだけ約束してもらったことがある。それは「この塾の他に何でもいいからサーヴィス業(できれば飲食店)でアルバイトをすること」だ。色々な人と関わりを持ち、コミュニケーションスキルを磨いてもらいたい、ということと外界の世界の大変さを体験して欲しかったからだ。

 

この職に携わる人間は(勿論、全員がそうではないので悪しからず)、勘違いしやすい。生徒や保護者の方から「先生」と呼ばれ、「自分はすごい人間なんだ、成績が上がったのは自分のおかげだ」と錯覚をおこしてしまう。以前関わりを持った大切な教え子には、そういった誤った感覚を持ってもらいたくない。

 

彼らは、ホテルやマンガ喫茶、居酒屋などでバイトをしているが、やはり塾講師しか経験していない者との差は歴然としている。指示したことは的確にこなし、生徒に対する気配りもできる。誤解を恐れずに言うならば、中途半端な新卒のホワイトカラーよりもよっぽど優秀であると思う。

 

前回、中学生のテスト対策のサポートで3人に来てもらったが、何一つ無駄な動きがない。紛れもなく、もう一つのバイトでのご指導の賜物であると確信している。一生懸命に教室を動き回り、生徒の答案の◯付けをしている姿と見ていると、彼らが小中学生だった頃のことを思い出す。3人とも何がしらで激しく叱ったこともあれば、泣かせたこともある。深夜までの自習を強要したこともある。

 

にも関わらず、何年も経ってまたこういった形で関わることができて本当に嬉しく思う。

 

余談だが、鍛え上げられた教え子たちは就職活動でもしっかりと結果を出している。

 

今年も早々と内定をいただいた子がいるので、近いうちにお祝いをしたいと思っている。